top of page

Tips

管理栄養士記事

ピアカレ管理栄養士による健康情報コラムです。
*不定期更新です

貧血だけではない?
鉄不足がまねく「摂食障害」の落とし穴

2026年5月29日

2026年5月作成


管理栄養士のみなさんが「鉄不足」と聞いたとき、まず何をチェックしますか?

きっと多くの方が「鉄欠乏性貧血」を思い浮かべて、ヘモグロビン(Hb)の数値を最初に見ますよね。


しかし、鉄不足=貧血、だけではありません。 貧血になる一歩手前の「潜在的な鉄不足(貯蔵鉄のカラっぽ状態)」がメンタルに与える大ダメージです。

実は、拒食や過食といった「摂食障害」の背景に、深刻な鉄不足が隠れているケースも見逃せません。


今回は、一見関係なさそうな「鉄」と「摂食障害」のつながりについてお届けします。


なぜ鉄が足りないと「心」が乱れるの?

鉄の仕事は、酸素を運ぶだけではありません。

実は、脳内の幸せホルモンやリラックスホルモン(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン)を作るときの”欠かせない補酵素”です。


これらは気分を安定させたり、ドカ食いを抑えたりするのに必須の物質。つまり、鉄が足りないとこれらの物質が作れなくなってしまいます。


【負のスパイラル】

鉄不足 ➔ 脳の幸せホルモンが作れない ➔ 謎の不安やイライラ ➔ 「手っ取り早く脳を満たそう」と過食へ、あるいは「強いこだわり」から拒食へ


摂食障害のあの「食べたい!」「食べたくない!」という強い衝動は、本人のメンタルの弱さや性格のせいだけではありません。脳が栄養飢餓(鉄不足)を起こしてパニックになっているサインの可能性があります。


Hbが正常でも安心しちゃダメな理由

健康診断の「Hb値」だけを見て、「貧血がないから大丈夫。」と判断するのはちょっと危険です。体内の鉄は、次のような順番で減っていきます。


  1. 貯蔵鉄(フェリチン)の減少

  2. 血清鉄(血液中を移動する鉄)の減少

  3. ヘモグロビンの減少(ここでやっと「貧血」と診断)


幸せホルモンやリラックスホルモンの合成は、3.の「貧血」になるずっと前、つまり1.の「フェリチンが減った段階」からすでに落ち始めています


アセスメントの際は、ぜひ「フェリチン値」にも注目してみてください。

(※ただし、重度の拒食状態で体に炎症が起きていると、鉄不足でもフェリチンが見かけ上高く出ることがあるので、他の血液データとあわせて総合的に見る必要があります)


明日から使える!栄養指導の

1. 「食べられない理由」を生化学的に伝えてあげる

「意志が弱いからコントロールできないんだ…」と自分を責めているクライアントには、「脳のガソリン(鉄)が足りなくて、脳が誤作動を起こしているのかも」と伝えてみてください。

精神論ではなく「体の仕組み」として説明してあげることで、罪悪感がフッと軽くなり、「じゃあ食べてみようかな」という一歩につながります。


2. 「ヘム鉄+タンパク質」をセットで

鉄を体内で働かせるには、運び役となる「タンパク質」が絶対に必要です。

胃腸が弱っている方には、吸収の良い赤身の肉や魚(ヘム鉄)と一緒に、卵や豆腐など、消化に優しい良質なタンパク質を少しずつステップアップしながら勧めていきましょう。


まとめ

「痩せたいのに食べてしまう...」クライアントからよく聞くフレーズですね。

つい行動変容を急ぎたくなりますが、そのドカ食いは意志の弱さではなく、鉄不足による「脳からのSOS」かもしれません。

ただ食事を制限するのではなく、丁寧なカウンセリングでクライアントの気持ちに寄り添いながら、食欲の裏側にあるメンタル面の理由や、栄養の不足を一緒に丁寧に見つけていきましょう。


<参考>

・オーソモレキュラー栄養医学研究所 資料

・日本精神神経学会 学会発表・論文

・日本摂食障害学会 ガイドライン

・『うつ・しきりにつらいのは鉄・亜鉛不足が原因だった』(奥平智之 著)

Copyright © by SYUGACON Inc.  All rights reserved.

bottom of page