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管理栄養士記事
ピアカレ管理栄養士による健康情報コラムです。
*不定期更新です
脂肪肝の名称変更

2025年7月23日
以前は「脂肪肝」といえば、”お酒をたくさん飲む人がなる”病気というイメージでした。
しかし、飲酒習慣のない人でも、一部、脂肪肝が進行して肝硬変や肝がんを発症することが分り、それを「非アルコール性脂肪肝炎(NASH/ナッシュ)」と呼ぶようになり、注目を浴びました。
NAFLDとNASH

脂肪肝には、
・アルコールの飲み過ぎによる「アルコール性脂肪肝(alcoholic fatty liver)」
・アルコールとは関係なく食べ過ぎや運動不足など生活習慣による「非アルコール性脂肪性肝疾患(non alcoholic fatty liver disease: NAFLD)」に分けられます。
またNAFLDには経過の良い単純性脂肪肝と、肝硬変や肝がんに進行する可能性がある非アルコール性脂肪肝炎(non alcoholic steatohepatitis: NASH)があります。
非アルコール性脂肪性肝疾患には、NASH(ナッシュ)とNAFLD(ナッフルディー)があります。
いずれも、アルコールを(ほとんど)飲まない人にみられる脂肪肝疾患として定義されていました。
しかし、近年では肥満や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を伴う脂肪肝が増加しており、単に”アルコールを飲まない”だけという定義に、当てはまらない例が課題となってきていたようです。
MASLD/MASHへ名称が変更に
そこで、国際的な肝臓学会が中心となって、2023年6月、代謝異常を伴う脂肪肝疾患をMASLD(マッスルディー/マッスルド)、代謝異常を伴う脂肪肝炎をMASH(マッシュ)と定義し、名称を改訂しました。
日本においても、2024年8月に正式に名称を変更することとなりました。
変更の背景
「本変更の背景は "alcohol"や"fatty"という言葉が入った病名が誤解を招きやすく、不適切であるということが世界的に議論されていたことによります。」
(日本生活習慣病予防協会より引用)
近年、疾患名にマイナスなイメージを持ってしまうといった声から、名称を変更する動きがよく聞かれますが、そのひとつにNASHがあったようですね。
変更後の疾患の定義
MASLD (Metabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease) 代謝異常(肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧など)を伴う脂肪性肝疾患。
MASH (Metabolic Dysfunction-Associated SteatoHepatitis) MASLDのうち、肝臓に炎症や線維化が認められる状態。
まとめ
・疾患の定義に、代謝異常という概念が明確に導入されました。
・欧米の肝臓学会が2023年6月に発表し、日本でも2024年8月に正式に決定された。
用語説明
・Steatotic Liver Disease(SLD):脂肪性肝疾患
・Metabolic Dysfunction Associated Steatotic Liver Disease(MASLD):
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患
・Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis(MASH):
代謝機能障害関連脂肪肝炎
・Alcohol Associated (Related) Liver Disease(ALD):
アルコール関連肝疾患
・MetALD :代謝機能障害アルコール関連肝疾患
・Cryptogenic Steatotic Liver Disease:成因不明脂肪性肝疾患
・Specific Aetiology Steatotic Liver Disease:特定成因脂肪性肝疾患
参考)
日本生活習慣病予防協会
https://seikatsusyukanbyo.com/calendar/2024/010760.php
一般財団法人日本消化器病学会
https://www.jsge.or.jp/news/20240820-3/