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管理栄養士記事
ピアカレ管理栄養士による健康情報コラムです。
*不定期更新です
日本食と長寿

2025年6月2日
2025年6月作成
和食がユネスコ世界無形文化遺産に登録されてから10年以上経ちますが「日本食はヘルシー」としてまだまだ海外で人気です。
日本食と和食の違い
「和食」と「日本食」は、どちらも日本の料理を指す言葉です。 その違いは表1の通り、「日本食」は「和食」を含む、より広い範囲の料理を指す言葉です。
表1:和食と日本食の違い
日本食 | 広義に、日本で食されている料理全般を指します。 他国の料理を日本風にアレンジした料理も含まれます。 ◆ラーメン、カレーライス、オムライス、スパゲッティナポリタンなど |
和食 | 狭義に、日本の伝統的な料理を指します。 海外から入ってきた料理を日本流にアレンジしたものは含まないことが多いです。 ◆懐石料理、郷土料理、精進料理など |
世界にみる健康食のひとつ「地中海食」との比較
長寿国である日本の食事がヘルシーとして注目を浴びる一方で、世界の健康食としてスタンダードとなっている「地中海食」。 その違いは何か?共通点とともに見てみましょう(表2)。
表2:日本食と地中海食の共通点と相違点
共通点 | 相違点 | |
日本食 | ・野菜、豆類を多く食べる ・穀物(小麦、米)を「主食」とする ・魚介類をよく食べる | 油脂を使わない、発酵食品が豊富、海藻類を食べる |
地中海食 | ・野菜、豆類を多く食べる ・穀物(小麦、米)を「主食」とする ・魚介類をよく食べる | オリーブオイルを多用、乳製品が豊富、肉は比較的少なめ |
日本食は低脂肪ながらも、しょうゆ、味噌、みりんなど、多様な調味料を使うため、高塩分という特徴があります。 一方、地中海食は、良質な油を多く取り入れ、オリーブオイルと塩、こしょうをメインとしたシンプルな味付けが特徴で、高脂肪であるものの、健康に良いとされています。
食事と健康の研究
食事をおおまかに分解すると「栄養素」「食材/食品」「食事パターン」に分けられます(表3)。
表3:食事の要素
栄養素 | たんぱく質、脂質、炭水化物など |
食品/食材 | 肉、魚、果物、野菜など |
食事パターン | 和食、洋食、中華料理、イタリアンなど |
食事(栄養)と健康の研究というと、「食品単位」で研究を進めていくことが多く見られます。
例)
緑茶摂取が多いほど循環器疾患のリスクが低下している
みかんの摂取頻度が増えるにつれてがん罹患数が減っている
魚の摂取頻度が増えるほど認知症発症リスクは低下している
しかし、これらの食品は日本食を構成する要素の1つです。
日本食を構成する要素を”食事パターン”としてまとめて観察すると健康に及ぼす結果はどうなるのか? 「地中海食」は健康に良いといわれるように、「日本食」も同様ではないか?
国立がん研究センターでは食事パターンの健康影響に注目、調査が行われました。
食事パターンとは?
皆さんがイメージする「洋食の朝ごはん」はどのなものですか? 多くの人が、パン、オムレツ、スープ、コーヒーなどを想像すると思います。
では、日本の朝ごはんはどうですか?
ごはん、味噌汁、焼き魚、お茶
おそらく、皆さんこのようなイメージがありますよね。
このような「日本の食事」をイメージさせる要素をまとめたものを[日本食パターン]とし、7つの要素が定められています。
[日本食パターン:7つの要素] ご飯、みそ汁、海草、漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶
食事アンケートから「日本食パターン」の度合いについて、8つの食品からなる「日本食インデックス」という指標を使用し点数化します。
〈8つの指標となる食品〉
ご飯、みそ汁、海草、漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶、牛肉・豚肉
具体的には、「ごはん、みそ汁、海草、漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶」の摂取が中央値より多い場合、「牛肉・豚肉」の摂取量では少ない場合にプラス1点としてスコア化し、合計点を4つのグループに分類し、死亡との関連を調査しています。
日本食スコアの結果
約19年にわたる調査から、「日本食パターン」のスコアが高いグループは、低いグループよりも死亡リスクが低下するという結果が得られました。
他に、要介護リスク、認知症発症リスクに関しても、スコアが高い方がリスクが低下することがわかっています。
世界では日本食がブームのなか、当の日本人は日本食離れが進んでいるのは非常に残念なことです。 今一度、日本食の良さを見直したいところですね。
<参考>
・国立研究開発法人国立がん研究センター>多目的コホート研究>日本食パターンと死亡リスクとの関連について
・農林水産省>「日本食パターン」で健康的に過ごそう!