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管理栄養士記事
ピアカレ管理栄養士による健康情報コラムです。
*不定期更新です
「低FODMAP食」とは?

2025年1月16日
2025年1月作成
FODMAPとは
2005年にオーストラリアのMonash大学消化器内科の研究チームが、うまく消化吸収されない短鎖炭水化物を「FODMAP(フォドマップ)」と名付けたそうです。
FODMAPとは、小腸で吸収されにくい4種類の発酵性糖質を指す用語です。
Fermentable➝発酵性
Oligosaccharides➝オリゴ糖
Disaccharides➝2糖類
Monosaccharides➝単糖類
AND
Polyols➝ポリオール
それぞれの頭文字を取ってFODMAP(フォドマップ)と呼びます。
FODMAP食とは発酵性糖質を多く含む食品のことをいい、逆に「低FODMAP食」は発酵性糖質を取り除いた食事のことをいいます。
◆FODMAPが注目された理由
なぜFODMAPが研究対象になったかというと、
過敏性腸症候群(IBS)、潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)の腹痛や下痢、便秘を起こす原因ではないかと疑いがでてきたことです。
ここからIBSの食事療法として発酵性の糖質であるFODMAP(フォドマップ)を控える「低FODMAP食」に注目が集まりました。
◆腹痛や下痢、便秘を起こす原因
消化されにくいFODMAPの濃度を薄めようと、小腸内に多量の水分を呼び込むことで、下痢となります。
大腸へ移動した後、腸内細菌により発酵を受けガスが溜まり、お腹が張って腹痛を起こします。
◆FODMAPを多く含む食べ物
パン、ラーメン、うどん、パスタ、ピザ、牛乳、ケーキなど、普段口にする頻度が高い食べ物に多く含まれています。
また、納豆やヨーグルトなどの、一般的には”腸に良い”と言われている食品も、高FODMAP食品に分類されるものがあります。
◆低FODMAP食による食事療法
医療の現場では、導入方法が確立されており、やみくもにFODMAPを避けるのではなく、何が腹痛の原因となる食材なのかを見極めることにあるようです。
STEP1.
最初は低FODMAP食を実施して消化器症状が改善するのかを見極める(3週間程度)。
以降は普段食べていた食材を少量から追加していく。
STEP2.
症状が出ない食材の量や頻度を確認し、少しずつ食べられるものと避けた方がよいものを確認していく(5週間程度)。
STEP3.
最終的には、消化器症状が出ない食事で栄養バランスの良い食事を目指す。
低FODMAP食を実施する目的は、下痢や腹痛を起こす原因を探り、適量を見極めること。
そのうえで、個人に合ったバランスの良い食事を形成していくことにあります。
◆注意点
・低FODMAP食を継続することは、栄養バランスの点からみてマイナスな面もあるため、期間を設けることが大切。
・IBSの食事療法として注目される一方で、ビフィズス菌が減少する報告がある他、体に良い影響をもたらす短鎖脂肪酸の産生が低下することも考えられています。
まだまだ研究途中といえそうですね。
◆健康な自分には関係ない?
ここまでの情報だと、健康な自分には関係のない話かな?と思われる方もいるかもしれません。
身近なものだと、キシリトール配合のガムには注意書きとして、
「一度に多量に食べると、体質によりお腹がゆるくなる場合があります。」
と表示があります。
お腹を緩くさせる原理は、IBS・IBDの方たちと同じです。
また、腸活のためにと食物繊維が豊富な食材を取り入れた次の日、お腹が張って苦しい経験をした方もいるのではないでしょうか?
栄養指導をしてきた中で、そのような声が多く聞かれた食材のひとつに「納豆」がありました。
納豆といえば体に良いことしか聞かない食材ですが、納豆を消化吸収するのが苦手な方がある一定数います。
また、さつまいもを食べるとガスが多くなるのも同じですね。
そのような場合は無理して取り入れる必要はなく、1回に食べる量を減らしたり、頻度を減らしたりしながら、消化に負担のない自分にあった食べ方を探してみましょう。
<用語説明>
■短鎖炭水化物:糖鎖の短い炭水化物の総称。
■発酵性糖質:小腸で消化吸収されず、大腸での発酵性を有する糖質の総称=FODMAP
歯科の分野では、口の中のバクテリアによって新陳代謝され酸を生成し、歯垢を形成してむし歯の原因となる糖質を指すこともある。
■過敏性腸症候群(IBS):大腸内視鏡などの検査を行っても目に見える異常がないにもかかわらず、下痢、腹痛、腹部膨満感、ガス、便秘などの症状に悩まされる病気。
■炎症性腸疾患(IBD):大腸の粘膜に潰瘍やびらん(ただれ)ができる病気。
□潰瘍性大腸炎:IBDに分類される。主な炎症部位が大腸の粘膜。びらんや潰瘍ができる。
□クローン病:IBDに分類される。主な炎症部位が口から肛門までの消化管のどの部位にも炎症や潰瘍が起こる可能性がある。特に小腸と大腸に多くみられる。
<参考>
大正製薬商品情報サイト
https://brand.taisho.co.jp/contents/chokatsu/054/
田辺三菱製薬サイト
https://hc.mt-pharma.co.jp/site_cerekinon/self-medication/dietary-cure/article/about-fodmap.html